バスケ男子代表ホーバスHCの「手腕と評判」 48年ぶり自力五輪の結果次第ではNBAが争奪戦!
バスケットボール男子W杯日本代表のトム・ホーバス・ヘッドコーチ(HC=56)の評価がうなぎ上りだ。
今大会は1次リーグで世界ランキング24位の格上フィンランド(日本は36位)を下す大金星を挙げると、順位決定戦(17~32位)ではベネズエラ(同17位)、カボベルデ(同64位)を相次いで撃破。総合19位でアジア勢1位となり、2024年のパリ五輪出場を決め、1976年モントリオール大会以来、48年ぶりに自力の五輪出場に導いた。
上背で劣る日本のデメリットを補うため、就任以来、身長が低い選手でも狙える3ポイントシュートを重視。ゴール前のペイントエリアに選手を集めるのではなく、アウトサイドに広げる大胆な戦術で女子代表を率いて史上初の銀メダルを獲得した東京五輪に続く快進撃をもたらした。
■戦術、技術の研究熱心な激情家
米プロバスケットボールNBAを中心にトップレベルの技術や戦術を分析するなど、研究熱心なことで知られる一方、コートサイドでは激情家として有名だ。
試合中はベンチから大声で指示を出すのはもちろん、タイムアウトには選手に対して英語と日本を交えて激しい口調でアドバイスするシーンが今回も多かった。ファウルやミスを繰り返す選手には主力であっても容赦しない。1次リーグの豪州戦では今大会の原動力となったPG河村勇輝(22=横浜BC)が勝負どころでファウルを犯すと、「ふざけんな! 細かいこと分かってないんだったらダメだよ! 簡単なことじゃないですか!」と、大声で叱責するシーンがあった。
代表合宿の練習中でも選手に対する厳しい姿勢は変わらない。チームが目指すプレースタイルから逸脱したり、狙い通りの戦術をこなせない選手には、練習を中断して「何やっているの! 決められたことは守って!」などと声を荒らげることが珍しくないという。
女子代表監督時代には、厳しい口調に涙を流す選手もいたそうだが、単なる鬼軍曹ではない。苦手なプレーを抱える選手には、集合時間よりも早めにコートに姿を見せて個人練習に付き合ったり、居残りでシュートを打っている選手がいれば、球拾いをしながら助言することもある。
東京五輪女子代表で精度の高い3Pシュートを披露したPFの宮沢夕貴(30=富士通レッドウェーブ)は本紙のインタビューで観察力に長けているとこう明かしている。
「今までのW杯、アジアカップでは大会前の親善試合でピークに達していたこともあった。トムさん(ホーバスHC)も選手の疲労度や体調を考慮しながら、息を上げるところは上げて、しっかりとアジャストできたので銀メダルにつながったと思う」
ホーバスHCの男子監督招聘を決めた日本協会の東野智弥技術委員長は、「規律を重視し、一つに集中して余計なことを考えない」と強烈なリーダーシップを高く評価している。