大谷翔平「10年1000億円超契約」の裏側と今後…ドジャースでの“二刀流中心”には落とし穴
米メディアによればプロスポーツ史上最大だという。大谷翔平(29)がドジャースと結んだ10年総額7億ドル(約1015億円)契約のことだ。
日本時間10日、大谷は自身のインスタグラムに英文でこうつづった。
「すべてのドジャースファンの方々、常にチームのために最善を尽くし、最高の状態でいられるように全力を尽くすことを誓います」
契約の詳細は明らかになっていないものの、米メディアの報道によれば10年7億ドル契約のポイントは主に2点。ひとつは契約を途中で破棄できるオプトアウトの権利は含まれていないこと。もうひとつは7億ドルの大半を10年以降の後払いにすること。
これはドジャースの年俸総額を考慮したもので、その分のカネは選手の補強に費やしてもらいたいとの本人の要望らしい。要するに大谷自らぜいたく税対策を申し出たというのだ。メジャーに詳しいスポーツライターの友成那智氏はこう言った。
「10年7億ドルで契約した大谷は、今後もドジャースがコンスタントに勝ち続けると判断したのでしょう。だからこそオプトアウトなしの10年契約なのかもしれませんが、気になるのは球団側の救済措置がまったく含まれていない点。大谷は2度目のトミー・ジョン手術をやったわけで、8年後や9年後も投手を続けている保証はどこにもない。3度目の手術をしたら、投手はもうムリですからね。
年俸の後払いに関しては美談仕立てになってますけど、ぜいたく税だろうと、必要なときには払うというのがドジャースのスタンス。強いチームであって欲しいという本人の希望はもちろんあるでしょうけど、大谷に心配してもらわなくても、ドジャースにはそれだけの財力がある。
今季の観客動員数はメジャートップの383万人。特に大きいのが年間約2.7億ドルといわれる地方のテレビ放映権料です。筆頭オーナーのマーク・ウォルターだけでなく、NBAのスターだったマジック・ジョンソンやテニスのキング夫人らそうそうたるメンバーが経営陣に名を連ねていますからね」
■「“大谷中心”のチーム作りでは投打にひずみが…」
大谷はドジャースと面談した際に、選手育成やマイナーのシステムについても質問したといわれる。今季までの11年間は地区優勝10回、2位1回で、すべてプレーオフに進出している。「ヒリヒリした9月」を過ごしたい大谷にとって、ドジャースが今後もコンスタントに勝ち続けられるかは重要な判断材料なのだろうし、その確信が得られたからこそオプトアウトなしの10年契約なのだろう。
とはいえ、大谷が加入するドジャースは、本人のもくろみ通り本当に勝ち続けることができるのか。代理人のネズ・バレロ氏は大谷の手術前、自ら会見を開いてこう言っている。
「彼は投げることが大好き。二刀流を長く続けることが重要なんだ。ここ数年のように(投打)両方続けていくことは疑いようがない」
たまに投げたり打ったりではない。ここ数年の大谷は原則、全試合にDHで出場。中5日で先発した際も打席に立つリアル二刀流だった。ドジャースが大谷争奪戦を制したのは、そんな本人の要望を受け入れたということだ。
「要するにドジャースは投打とも大谷中心のチームにするということでしょう。ただ、そうなると投打ともひずみが生じるかもしれません」と、前出の友成氏がこう続ける。
「今季ドジャースのマルティネスはDHとして110試合に出場した。残りの52試合のDH枠は、他の主力選手が休養や守備の負担を減らす目的で使ったのです。捕手のウィル・スミスは14試合、三塁手のマンシーは10試合、右翼手のヘイワードは6試合、中堅手のアウトマンは3試合、DHとして出場しています。ところが守れない大谷が加入すると、他の選手がDHを使えなくなってしまう。特に守備の良くないマンシーは打撃を受けることになります」
大谷は手術明けの来季、DHに専念せざるを得ない。つまり大谷が指名打者のポジションを独占することで、主力選手の休養の場がなくなるばかりか、守りの不安が増すことになるのだ。