キャリアの分岐点になった移籍の選択…名門パリSG、年俸倍額提示した独クラブのオファーを蹴った
そこで松井はシュツットガルト視察に出向いて環境面を確かめた。
「クラブハウス、練習場、スタジアムを見に行きましたけど、やはりメルセデス・ベンツをつくっているダイムラーが親会社ということで、しっかりしたクラブという前向きな印象を受けました。年俸もサンテティエンヌの倍を提示された。それもうれしかったんですが、『フランス語じゃなくてドイツ語を勉強してほしい』と注文されて心が萎えました。4年間必死にフランス語を覚えたのに、また同じことをするのは負担が大きすぎる。それで断念しましたね」
結局、松井は契約をせかされたサンテティエンヌ行きを決意。サインを済ませてパリSG入りは諦めるに至った。
「パリSGは最終的に1部残留に成功し、ルグエンも残留した。でも、口約束を信じて待ち続け、他の魅力的な移籍話をフイにすることはできませんでした。あの判断が自分のキャリアの分岐点になったのは事実ですが、サッカーの世界はサインをしなければ何も始まらない。厳しい世界なんだと痛感した出来事でした。ただ、正直に言うとパリにはやっぱり行きたかったですね」と、本人は苦しい胸の内を吐露した。