感染症
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【誤嚥性肺炎】錠剤が飲みにくい場合でも自己判断で粉砕してはいけない
高齢者や脳血管障害後などは、嚥下機能が低下するケースが多いと前回お話ししました。 脳血管障害後には、咳反射が低下してしまうことが知られていて、その原因のひとつとして迷走神経知覚枝から咽頭や喉頭・気管の粘膜に放出されるサブスタ...
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コロナワクチンと超過死亡との関係は? 米研究チームが専門誌で報告
インターネット上では、「新型コロナウイルスワクチンの接種による超過死亡」といった情報をしばしば見かけます。超過死亡とは、集団の死亡率が一時的に増加し、本来的な死亡率の期待値を超えてしまう現象のことです。しかし、ワクチン接種と超過死亡...
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「メタ分析」の情報の氾濫はむしろ判断を混乱させる
前回、メタ分析の2つのバイアス、「出版バイアス」と「異質性バイアス」について説明した。今回は、その続きである。 メタ分析のためには、徹底的な漏れのない情報検索で候補となる研究を同定し、その中から一定の基準を満たした質の高い研...
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「梅毒」が昨年の30%増ペース…患者急増で懸念される性感染症の医療崩壊
梅毒の感染拡大が深刻な事態になってきた。厚労省が毎週発表する感染症発生動向調査週報速報データ(第29週)によると、梅毒の感染件数は179件増えて、年初来の累計数は8349件となった。これは前年同期の6385件を1964件上回っており...
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【誤飲性肺炎】常在菌が原因に…予防には口腔内のケアが欠かせない
「誤嚥性肺炎」は嚥下機能の低下により口腔内容物を誤嚥することで発症します。じつは健常者でも睡眠中などに誤嚥しているのですが、口腔内の常在菌は病原性が低く菌量も少ないため、通常は肺炎などを起こしません。しかし、高齢者や脳血管障害後などで...
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「メタ分析」が最良のエビデンスとは限らない…出版バイアスと異質性バイアス
前回、「メタ分析」は多くのバイアスの影響を受けやすいという点を指摘した。それについて、実際の論文をもとにもう少し詳しく見ていこう。 まずは「出版バイアス」を取り上げよう。一般に研究結果は、効果があると論文として発表、出版され...
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【誤嚥性肺炎】死因6位に…独立してカウントされるようになった
気管の入り口にある「喉頭蓋」は、われわれが食物や唾などをのみ込むとき、反射的に気管に蓋をして、食物などを食道に導く役割をしています。ただ、ときには誤って食物や唾などが気管に入ってしまう場合があります。このときには、咳き込んだりするこ...
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高齢者の「息」は若者より感染リスクが高い 米科学アカデミー機関誌で報告
新型コロナの流行以降、「エアロゾル感染」という言葉を耳にする機会が多くなったと思います。これはウイルスを含む小さな飛沫(ひまつ)による感染のことで、こうした飛沫は目には見えないのですが、吐く息とともに空気中に排出され、長くそこにとど...
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マスクの効果を検討した「メタ分析」…1つの論文で多くの論文情報が手に入る
マスクの着用を勧めることによる感染予防効果をデンマークとバングラデシュで行われた2つの研究を通して検討してきた。こうして一つ一つの論文を検討するには、探すのも大変だし、さらにそれを読むのにも手間がかかる。また見逃している論文があるか...
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医薬品が感染症を引き起こしたり悪化させるケースもある
この連載で、「水虫に対してステロイド軟膏の塗布で悪化」や「吸入ステロイドによる口腔カンジダ」といった、ステロイド薬を使うと免疫力が低下し、感染症になる危険性が高まるケースを何度かお話ししました。 しかし、ステロイド薬は体の炎...
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コロナのパンデミックが子供の発達を遅らせる?日本の研究報告
子供たちが豊かな感情や主体性を身につけ、新しい能力を発達させる過程には、生活環境や身近な人との関係性が重要です。しかし、コロナ禍を通じて、子供たちの生活環境や人間関係にもさまざまな変化が生じました。そんな中、コロナ禍の経験と乳幼児の...
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「マスクストレス」の健康に対する影響は? 米医学誌で報告
新型コロナの流行以来、「外出にはマスク」というのが、感染予防のための習慣となりました。今ではマスクの使用は個人の判断という方針になりましたが、それでも人混みなどでは、屋外でもマスクをしている人が多いのが現状です。有効性が確認されてい...
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マスクの予防効果を検討…もうひとつのランダム化比較試験「バングラデシュの研究」
これまで取り上げてきたことを一度まとめておこう。 情報の表すものは「真実」「バイアス」「偶然」であって、バイアスには「情報バイアス」「選択バイアス」「交絡因子」がある。そのうち交絡因子をコントロールしたデンマークで行われたラ...
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【カンジダ・アウリス】日本から報告された新種の真菌…高死亡率の感染症の原因に
「カンジダ・アウリス(Candida auris)」は、2009年に日本から報告された新種の真菌(カビ)です。70歳の女性の耳だれから見つかったため、ラテン語で耳を意味するaurisと名付けられました。 発見当初は高齢者で外耳...
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「検定」の危うさと「推定」のあいまいさ…医者も理解しているとは限らない
「検定」と「推定」の続きである。統計学的な考え方は、身近であるようで、数学的に正確に理解しようとすると途端に難しくなる。実際、多くの医者も統計学を苦手にしている。統計学は多くの医学部で必修科目である。 しかし学生時代は統計学が...
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【つつが虫病】ダニの一種に刺されて… 刺し口、発熱、皮疹が主要三徴候
前回、日本紅斑熱と症状がよく似ている疾患として「つつが虫病」について少しだけ触れました。つつが虫病は、日本紅斑熱と同じくリケッチア(微生物)が原因となる感染症です。 ダニの一種であるツツガムシに刺されることで、ダニが保有する...
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コロナワクチンは夕方よりも日中に接種すべき? 米医学誌で報告
地球上の生物は、約24時間の周期で体内環境を変化させることが知られています。人間においても体温やホルモン分泌など体の基本的な機能は約24時間のリズムを示すことが分かっており、このリズムを「概日リズム」と呼びます。 過去に行わ...
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統計医学的検討…「有意差なし」は必ずしも「効果なし」の意味ではない
情報を基に医療を考えるには、統計学的な手法を知る必要がある。その統計学的検討には前回取り上げたさまざまな指標と、さらに「推定」と「検定」という2つの方法がある。情報を表す3つの「真実・バイアス・偶然」の点で言えば、偶然を検討するため...
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【日本紅斑熱】マダニに刺されて感染…近年は夏前から増加中
5月、6月と「日本紅斑熱」の報告が相次ぎました。日本紅斑熱リケッチア(微生物)を保有するマダニに刺されることで感染します。 刺されてから2~8日頃に頭痛、全身倦怠感、高熱などを伴って発症し、高熱とほぼ同時に紅色の斑丘疹が手足...
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学校でのマスク着用義務化の効果は? スイスの研究チームが報告
新型コロナウイルスを5類感染症へ移したことに伴い、文部科学省は学校教育活動においてマスクの着用を求めないこととしました。一方、マスクの着用と感染リスクの低下を報告した研究は少なくありません。 ウイルス粒子を含む感染者の飛沫は...
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新型コロナ後遺症に糖尿病治療薬が有効? 63%リスクが低下
今年の5月8日以降、新型コロナは季節性インフルエンザと同じ扱いになりました。実際には流行は続いていますが、感染力は強いものの症状は軽いので、通常の風邪と同じように対応している方が多いと思います。ただ、高齢者や基礎疾患のある方では重症...
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アフターコロナの健康は「免疫力アップ」で維持する!
新型コロナウイルスの流行がようやく一段落し、以前のような日常生活が戻りつつある今、医療関係者の間では長期にわたる感染対策が講じられた影響によって生じたある「弊害」が懸念されているという。アフターコロナの今だからこそ気をつけなくてはい...
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「統計学的検討」の指標はさまざま 何が起きているかをどう表現するか
前回、デンマークのマスク推奨の効果を検討したランダム化比較試験について書いた。今回もその続きである。1カ月間のコロナ感染症が、マスク推奨群で1.8%、非推奨群で2.1%という結果であったが、この結果をさらに詳細に検討しよう。 ...
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【ニューモシスチス肺炎】かつて「カリニ肺炎」と呼ばれていたカビによる日和見感染症
「ニューモシスチス肺炎」という病名を聞いたことがあるでしょうか? 舌を噛みそうな名前ですよね。この病気は「Pneumocystis jirovecii」という真菌(カビ)によって引き起こされる肺炎なのですが、耳にしたことがないという方...
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ワクチン未接種ではコロナ後遺症を発症しやすい? 感染後2年の追跡調査で明らかに
新型コロナウイルスに感染すると、症状が長引いたり、治まっても再発することがあり、このような状態は「コロナ後遺症」(罹患後症状)と呼ばれます。特にワクチンを接種していない人では、コロナ後遺症を発症しやすいと考えられてきました。 ...
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マスクの効果を評価したランダム化比較試験 0.3ポイントでも条件が変われば…
今回はマスクの効果を評価したランダム化比較試験について紹介しよう。ようやく、やっとのことでというか、あるいはすでに読むのをやめてしまった人が多いかもしれないが、やめてしまった人がまた戻ってきてくれることも期待して、話を続けよう。 ...
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【真菌性眼内炎】目の中にカビが侵入して発症 カテーテル留置の合併症も
真菌(カビ)による感染症で、最近話題になったもののひとつが「真菌性眼内炎」です。カンジダやアスペルギルスなどの真菌が目の中に入り込んでしまうことで発症します。コンタクトレンズの装着や外科的な手術などで直接的に目が損傷を受ける場合(外...
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梅毒の患者は地方で急拡大している…「累計10人未満」は青森、山梨、島根のみに
梅毒の新規発症者数が止まらない。国立感染症研究所が毎週発表する、感染症発生動向調査週報(IDWR)速報データの第21週(5月22~28日)によると、梅毒の累計報告件数は前年の約1.37倍の5766件となった。このままのペースで増加す...
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【口腔カンジダ】口の中の常在菌が原因 免疫力の低下をきっかけに発症
前回お話ししたアスペルギルス症と同じ真菌感染といえば、「カンジダ感染症」のほうが有名かもしれません。以前、当連載でも膣カンジダについては取り上げたことがあります。免疫力の低下などにより、膣内常在菌であるカンジダが異常繁殖してしまうこ...
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「正しい情報」のあいまいさ…バイアスが情報をゆがめる
「統計学的に正しい情報」から、「薬を飲むこの人にとって正しい情報」までの距離を考えるといっても丸腰ではどう考えていいのか見当がつかないだろう。ここでは考えるためのさまざまな武器について、しばらく取り上げていきたい。 その基盤に...