「山と日本人」宮本常一著
■山から山へと移住したタタラ師
日本が高度成長期で物質文化に浮かれているとき、全国をくまなく歩き、地域社会の在り方を模索していた民俗学者の雄・宮本常一。奥深い山に住む山岳民の独特な生活形態を丹念に調べあげ、考察を加えた報告をまとめた一冊。熊やイノシシ、鹿の狩猟で生計を立てるマタギ、砂鉄の精錬にタタラを踏むという重労働を専門にして山から山へと移住したタタラ師。彼らは質素な暮らしでも自然に敬意を払い、独自の信仰や文化を生み出していた。
こうした山村文化の保存や振興への具体的な提案も記している。
(八坂書房 2000円)