「田舎のパン屋が見つけた『腐る経済』」渡邉格著
■「腐らない」経済から「腐る」経済へ
岡山県でパン屋を営む著者の経営理念は「利潤を出さないこと」。その結論に至るまでの日々を語りながら、自らが実践する「腐る経済」について論じた生き方本。
著者夫妻は、07年に千葉でパン屋を開業するが、原材料の高騰やリーマン・ショックなど世界経済の荒波に翻弄される。そんな中、父から勧められマルクスの資本論を読んだ氏は、世に出回る「腐らない」食べ物が「食」の値段を下げ、「職」をも安くし、その「安い食」は作り手から技術や尊厳を奪っている事実に気づく。さらに「腐らない」お金が資本主義のおかしさをつくりだしていることにも。そうして行き着いたパン作りにおける「発酵」に学ぶ「腐る経済」を提案。
(講談社 1600円)