『「闇学」入門 』中野純氏
闇の魅力にハマり、好奇心から絵画や外国人の日記に残された記述を読み解くうちに、ナイトハイクは日本の伝統であることを発見した。
■宮沢賢治もナイトハイカーだった
「室町時代後期にはたいまつを持って富士山を登っていますし、江戸前期には夜中の登山が庶民のレジャーとしてブームになるなど、昔から山登りは夜山だったんです。ただ、昔の人にとっては当たり前だったので、文学作品などでも『登山』としか記述されていないんですね。実は宮沢賢治は経験豊かなナイトハイカーだったんですよ」
夜登山に限らず、日本人は“闇遊び”の達人でもあった。
「現在にまで受け継がれる蛍狩りや虫聴き、蛙聴、月待ち、また古今和歌集や句にも闇を題材にした作品が多く残っており、これは日本文化や日本人の感性のほとんどが闇によって育まれた証しです。五感を豊かにする闇を知らないのはもったいない。日常の中でも闇入浴、闇飲みなど簡単に楽しむ方法はたくさんあります。だまされたと思って、ぜひ、未知の世界を味わってもらいたいですね」