「定年男のための老前整理」坂岡洋子著
■「老前整理は、第二の人生の暮らし方を考えるキッカケになります」
生前整理でもなく、遺品整理でもなく、老いる前に身辺を片付けようと提唱する「老前整理」が話題だ。ちなみに老前整理とは著者の造語である。
「これまで数多く老前整理セミナーを開催してきましたが、参加者の大半が女性。家の片付けは女房の管轄だから、自分のほうが先に死ぬからと任せきりの男性は多いですが、老前整理が必要なのは、むしろ男性なんですよ」
長年、インテリアコーディネーターとして活躍する中で、在宅介護の現場にモノがあふれていることを実感した著者。多すぎるモノはケガにつながり、またバリアフリーや手すりをつけようにも実行できない。年を取ってからでは介護する人もされる側も片付ける気力がないばかりか、年金暮らしでは「捨てる」ことに抵抗があることに気が付いたという。
「だからこそ、気力・体力・判断力があるうちに整理が必要なんですが、加えて男性の場合はこれからの暮らし方を考えるキッカケになるんです。定年退職して気持ちの切り替えができず、5年、10年と時を過ごしてしまう人は少なくありません。でも整理を始めることで気持ちに区切りがつき、しまい込んでいた趣味を復活させたり、モノの処分を妻と相談することで会話も増え、結果、妻と地域デビューした人もいます。このように、老前整理とは単なる片付けではなく、生活が変わることを前向きに受け入れ、暮らしやすい環境をつくり、今をよりよく生きるための“リセット”作業でもあるんですよ」