「マモンの審判」宮城啓氏
■「今回描いたデリバティブを用いた横領手口は悪意があれば実現可能です」
「ファンドの会計や企業の税務業務に携わるなかで、いつも法的な範囲の中での有効な資金調達の手法や、運用資産の配分などを考えながら仕事をしているんですね。それは不正を防ぐ意味もあるんですが、あるとき、“こういうトリック”は可能ではないかと思いついたんです。そこから物語がスタートしました」
長年、M&Aや投資に携わってきた現役税理士の著者による、国際経済ミステリーである。
物語は、欧州のタックスヘイブン国ベルクールの銀行で、日本人の関与が疑われる1000億円の裏口座が発見されたことから幕を開ける。日本でのマネーロンダリングだとすれば史上最高額となる事件に、警察庁刑事局の金融情報機関FIUが動き出す。この捜査に加わることになったのが、財務分析力を買われた公認会計士の岸一真だ。
捜査線上に次々に浮かぶ金融業界の不透明さを物語るような謎。やがて岸は、シンガポールに拠点を置くファンド会社に行きあたる。