「マモンの審判」宮城啓氏

公開日: 更新日:

「今回描いた、先物やオプション取引といったデリバティブを用いた横領手口は、悪意があれば実現可能です。株式投資は、株価が上がれば皆が儲かりますが、デリバティブは利益を得た人がいれば同額の損失を被る人がいるゼロサム。つまり、相場がゼロのマネーゲームなんですね。こうした投機的、拝金主義的な風潮は90年後半、日本の株式市場が自由化されたことを機に強まり、たとえば顧客に積極的な投機を誘い短期売買をくり返して手数料を稼ぐなんてことは、今や当たり前。ですから運用中の人は、証券会社の言いなりになるのは注意ですよ(笑い)」

 外資系金融や投資の裏側といった現実を背景に描かれる本書は、“金”という化け物に魅入られた人々の群像劇のようでもある。金とは一体何なのか。捜査を進める中で、親友の死にまつわる事実を知った岸の心に変化が生じていく。

「儲けている人ほどさらに増やそうとする傾向が強く、お金に対する欲は際限がないものだと思いますね。私たちはずっと経済を追いかけてきましたけど、行き過ぎると自分の首を絞めることになりかねません。そろそろ経済成長すればハッピーという考え方を改め、別の幸福感を目指したほうがいいのではないか。そんなことを考えるキッカケになればうれしいですね」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    「かなり時代錯誤な」と発言したフジ渡辺和洋アナに「どの口が!」の声 コンパニオンと職場で“ゲス不倫”の過去

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    「よしもと中堅芸人」がオンカジ書類送検で大量離脱…“一番もったいない”と関係者が嘆く芸人は?

  1. 6

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 7

    入場まで2時間待ち!大阪万博テストランを視察した地元市議が惨状訴える…協会はメディア取材認めず

  3. 8

    米国で国産米が5キロ3000円で売られているナゾ…備蓄米放出後も店頭在庫は枯渇状態なのに

  4. 9

    うつ病で参議員を3カ月で辞職…水道橋博士さんが語るノンビリ銭湯生活と政治への関心

  5. 10

    巨人本拠地3連敗の裏に「頭脳流出」…投手陣が不安視していた開幕前からの懸念が現実に