戦争が終わっても“壊れ続ける”兵士たちの苦悩
集団的自衛権の行使容認などを踏まえた安全保障法制をめぐり、着々と進む与党協議。日本は今、再び“戦争ができる国”への道を進もうとしている。
しかし、戦争の代償はあまりにも大きく、戦いが終わっても容易に傷が癒えるものではない。そんな現実を突きつけるのが、デイヴィッド・フィンケル著、古屋美登里訳「帰還兵はなぜ自殺するのか」(亜紀書房 2300円+税)。戦争がきっかけで重い精神的ストレスを負ったアメリカ人兵士5人の苦悩の日々を追跡し、帰国後の彼らの“壊れ方”を生々しくリポートしている。
イラク戦争で戦ったアダム・シューマン(28歳)は有能で、親切で、高潔。誰からも信頼される男だった。しかしアメリカに帰国後、毎日のように自殺願望に苦しめられ、重度のPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断される。その引き金となったのは、戦地でのある出来事。可愛がっていた部下が、アダムが不参加の任務で道端の爆弾にやられて命を落とす。同僚の兵士は、「あんたがいたら、こんなひでえことにはならなかったのにな」と声をかけた。それはアダムを称える意味の言葉だったが、彼にとってそれは“おまえのせいで死んだ”という意味に置き換えられ、とてつもない罪悪感となって心を壊していった。