「春雷」葉室麟著
15年前、羽根藩に召し抱えられた多聞隼人は、藩主の三浦兼清に重用され、藩の財政立て直しに尽力。銀主に返済猶予を求める一方、百姓からは年貢を、商人からは運上金を容赦なく取り立てたため、人々には鬼と呼ばれ、城下には怨嗟の声が渦巻いていた。そんな中、隼人は兼清から、これまで難工事が予想されるため誰も手を付けてこなかった黒菱沼の干拓を命じられる。間違えれば一揆が起きかねない工事だが、隼人は家老への昇進を条件に応じる。噂を聞きつけ干拓工事の名人で、「人食い」と呼ばれる大庄屋・七右衛門が隼人に面会を求めてくる。
大願のために孤高に生きる男を描く時代長編。羽根藩シリーズ第3弾。(祥伝社 1600円+税)