【集団的自衛権のワナ】“自衛隊の軍隊化”を図る安倍政権。集団的自衛権論議のワナを検証する
「亡国の集団的自衛権」柳澤協二著
東大法学部卒業後、防衛庁に入庁し、防衛審議官、運用局長、長官官房長などの要職を歴任した著者。2004年からは足かけ5年間、当時の小泉官邸で自衛隊イラク派遣部隊のバックアップを担当した。
幸い自衛隊は1人の戦死者もなかったが、「その最大の要因は、イラク人に銃を向けず、一発の弾も撃たなかった」からだという。「武器を使わないことが武器を使うよりはるかに優れた戦術」という逆説が存在したのだ。
現在の東アジアの緊張状態についても、米軍は自分たちも半ば国際法違反的なことをやっている自覚があるからこそ、中国・北朝鮮が挑発や妨害を企てても軍事的反撃を避けて外交手段で解決を試みている。そんなとき日本が「すわ盟友の一大事」とばかり自衛隊を繰り出せば無用の武力紛争を引き起こすことになる。「お友だち」は殴り返すことなど望んでいないのだ。
集団的自衛権が期待する「抑止力」には、相手にやり返すぞと脅す「懲罰的抑止力」と、勝手なことをさせない「拒否的抑止力」がある。後者は既に機能しており、改憲などせずとも自衛力を保持しているのが現状なのだ。
(集英社 700円+税)