「明仁天皇と平和主義」斉藤利彦著
今春、太平洋戦争の激戦地パラオ諸島ペリリュー島を訪問するなど、天皇と皇后は即位以来、一貫して戦争の惨禍と向き合い、追悼と慰霊の旅を重ねてきた。その姿は、戦争の記憶を絶対に忘れてはならないという信念を身をもってあらわしてきたといえる。
その信念がどのように形作られてきたのか、平和を希求する天皇の自己形成の道程をたどる考察書。
少年時代に将来の天皇としてあるべき姿を強制される中で芽生えたと思われる「非権力性への志向」をはじめ、終戦後に採用されたアメリカ人女性家庭教師の影響、「平和の同志」となる皇后との出会いなど、苦悩と模索を続けながら「象徴天皇」としての理念と行動を実現していくその歩みの原動力に迫る。(朝日新聞出版 760円+税)