「白仏」辻仁成著
筑後川河口に浮かぶ大野島の鍛冶屋に生まれた稔は、7歳のとき、墓守の友人の手引きで少女の遺体を見る。その夜、高熱でうなされた稔は、夢の中で白仏を見る。同じころ、父の長四郎が軍の鉄砲を修理する鉄砲屋に転じ、稔は工場に持ち込まれる拳銃に魅せられる。隣家の娘・緒永久に恋心を抱く稔だが、熊本へ嫁いだ緒永久は3年後、棺に入れられ、島に戻ってきた。大正7年、シベリア出兵に動員された稔は生死の境目を体験して帰国。やがて、稔は戦死した兵隊や緒永久、友人らを鎮魂するため彼らの遺骨で一体の仏像を造ることを決意する。
明治から昭和にかけて生きた男の激動の人生を描いたフランスのフェミナ賞外国小説賞受賞作。
(集英社 640円+税)