「ラオスにいったい何があるというんですか?」村上春樹著
ラオス行きの直行便がないのでハノイ経由にしたら、ベトナムの人に「どうしてまたラオスなんかに行くんですか?」と聞かれた。答えようがない。ラオスにある何かを探すために行くのだ。ルアンプラバンという街で、メコン川をボートで遡ったら、自分という実体がすこしずつ希薄になっていくような不思議な感触があった。川は流れが激しく、かなり濁っていた。レストランでメコン川でとれた魚の料理を食べたが、市場で見た魚の姿はひどくグロテスクで、こんな魚を食べていたのか! と軽いショックに襲われた。(「大いなるメコン川のほとりで」)
アイスランド、フィンランドなどを旅した印象をつづった紀行文。(文藝春秋 1650円+税)