「2時間で走る」エド・シーサ著 菅しおり訳
2011年4月のボストン・マラソンで、ケニアのランナー、ムタイは2時間3分2秒でゴールした。彼は人間の体には42.195キロを2時間未満、つまり〈サブ2〉で走る能力があると信じている。〈サブ2〉に挑戦するために、科学者が長距離走で優位なケニア人の遺伝子を研究したが、遺伝的な根拠は発見されなかった。それよりも彼らの経済的な要因、つまり〈欲望〉に注目すべきだという者もいる。ケニアのランナーには今、ドーピング疑惑がもたれているが、彼らの〈ドーピングシステム〉はあまりに精緻さが欠けているのだ。マラソン競技をめぐるさまざまな問題に肉薄したノンフィクション。増田明美の解説付き。(河出書房新社 1800円+税)