「九番目の雲」山岡ヒロアキ著
営業マンの高梨吾郎は37歳。同期の大江は3週間も欠勤していて、未回収の売掛金があるという噂が流れている。離婚した妻が再婚するので、娘の養育費はもう要らないと言ってきたと笑っていたのだが。
独り暮らしだった吾郎の母が町中の店がお釣りをごまかすと訴えるようになった。同居することを考えて、妻子を連れて実家に行くと、母が衣類が散乱した部屋の中で全裸でへたり込んでいた。母を入院させた夜、吾郎は自分の大江に対する気持ち、母への思いなどがすべて偽物だったような気がした。――俺は今、目に見えない何かに試されている。ごまかしばかりで生きてきた男が再生する物語。
(講談社 1400円+税)