「メンチカツの丸かじり」東海林さだお著
ワサビにも階級社会は存在すると著者は言う。チューブのワサビと本物のワサビ。チューブのときはほんのちょっと自嘲的な表情をする。「どーせ本物じゃないんだよね、これ」。小皿の醤油に溶かし、ちょっとかき混ぜ、刺し身の一片をよーく浸して食べるという投げやりな食べ方をする。これが本物のワサビなら、刺し身の一片にワサビをちょびっとのせ、醤油につけて食べるのが正しい。でも、それはなんだかコセコセしてみみっちい。だから、著者はワサビを醤油に混ぜ、堂々とかき回す。(「ワサビ、この階級社会」)
おなじみ、食いもののエッセー「あれも食いたい これも食いたい」の第38弾!(朝日新聞出版 1200円+税)