野生生物の命と引き換えに私腹を肥やすWWFの実態
パンダのマークでお馴染みの自然保護団体、WWF(世界自然保護基金)。その暗部を白日の下に晒すのが、ヴィルフリート・ヒュースマン著、鶴田由紀訳「WWF黒書」(緑風出版 2600円+税)だ。
ドイツ人ジャーナリストが世界各地で取材を敢行し、金にまみれたWWFの実態を明らかにしている。ドイツで原著が出版されてわずか1週間で、WWFの圧力により書店での取り扱いが中止された、いわくつきの告発本である。
WWFは、とにかく金儲けがうまい。例えば、オランウータン保護に寄付を呼びかけるユーチューブのキャンペーンでは、悲劇的な音楽をバックに、チェーンソーで荒らされる熱帯雨林と、オランウータンが逃げ惑う映像が流される。そして、悲しげな瞳を向けるオランウータンのアップの後で、“ワンクリックで7ドル寄付すれば彼らが救われる”といったナレーションが流れる。このようなキャンペーンは大成功を収め、WWFに寄せられる寄付は年間7億ドルにも達するという。
ところが、WWFの収支報告はどんな資料からも探し出すことができない。WWFによれば、人件費に使われるのは寄付総額のわずか8%だそうだが、WWFの各国代表の給与は1人年間50万5000ドルにものぼり、世界90カ国で雇われているフルタイムスタッフは約5000人。人件費だけで寄付の50%を食い尽くしているという報告もある。
さらに、WWFは金のために野生生物たちの命を奪っていると本書は糾弾する。インドでは絶滅の危機にあるトラの研究のため、電子探索装置付き首輪など高額な機器が必要だとして寄付を呼びかけている。しかし、これらを導入するとき、トラは大量の麻酔銃を撃ち込まれ、心臓発作で多数が死んでしまう。その一方で、WWFは“トラに会える”という金持ち向けのエコツーリズムを実施。参加費用は1人1万ドルにもなるという。
発売差し止め訴訟を乗り越えて出版された本書。必読だ。