食べても太りにくい“夢の甘味料”が誕生
砂糖の70%の甘味を持ちながら、カロリーはほぼ0%。しかも、食後の血糖値の上昇抑制や、内臓脂肪の蓄積抑制などの機能が臨床試験でも明らかになっている。そんな甘味料があることをご存じだろうか。
松崎隆司著「香川発 希少糖の奇跡」(日経BP社 1300円+税)は、自然界にごくまれにしか存在しない“希少糖”を研究し、世界に先駆けて大量生産を実現した人々の記録。肥満が社会問題化しているアメリカの食品素材展でも一番の注目を集めた、夢の甘味料の誕生秘話がつづられている。「D-プシコース」と呼ばれる希少糖の量産化に世界で初めて成功したのは、香川大学の何森健特命教授だ。1991年、一般的な果糖をD-プシコースに変える酵素を自然界の微生物から発見。研究室レベルでの大量生産を実現した。しかし、ここまでの道のりは決して平坦なものではなかった。
何しろ、自然界にはほぼ存在しないため、希少糖は何かの役に立つとは考えられず、当時は血糖値上昇を抑制するなどの機能も明らかになっていなかった。研究する意義はないというのが当時のバイオの世界の常識であり、アメリカの微生物利用学の学会誌に論文を投稿しても、掲載拒否という扱いを受けたこともあるという。しかし何森教授は、何十年か先の未来に必ず何かの役に立つはずだと考え、研究を続けた。