「家康、江戸を建てる」門井慶喜著
天正18年、豊臣秀吉は徳川家康に関東八カ国の提供を提案する。小田原征伐の功に報いるというのが表向きの口実だが、低湿地が広がる未開の地の関東と、家康の所領である駿河、遠江、三河、甲斐、信濃を交換するのが条件であり、家康の力を弱めるための策略だとして家臣たちは猛反対した。しかし家康は国替えの要求を受け入れることを決める。
本書は、江戸に都を築き上げるまでの家康の采配と、その臣下の涙ぐましくも地道な努力の行方を追う。
江戸を整備するにあたって、家康が目をつけたのは洪水や湿地帯を克服するための治水、経済を握るための貨幣、江戸の飲み水を支える水道整備、大手門の石垣積み、秀吉に対抗するための白一色の江戸城天守の建築の5つだった。
利根川の流れを変えた伊奈忠次、貨幣作りに生涯をかけた橋本庄三郎、水源探しに奮闘した大久保藤五郎、石切りの吾平、大工頭の中井正清ら、揺るぎない江戸の礎を築いた人々の汗と涙の物語となっている。(祥伝社 1800円+税)