「自由学校」獅子文六著
昭和の人気作家の魅力が詰まった代表作の復刻。
五百助と駒子は昭和16年秋に結婚。何事にも動じない五百助に大人物の貫禄を感じていた駒子だが、9年経った今は夫が無能なでくの坊にしか見えない。
そんなある朝、出社しない夫を問い詰めると、五百助は自由が欲しくなって会社を1カ月前に辞めたと打ち明ける。怒った駒子は、五百助を家から追い出す。世渡りの才覚がない五百助のことゆえ、すぐに謝って戻ってくるかと思ったが、1週間、1カ月が過ぎても戻ってこない。頭の片隅で夫のことを心配する駒子に、10歳下の隆文や妻と別居中の辺見が言い寄ってくる。同じころ、五百助は老ルンペンの食客となり、さまざまな人間と出会っていた。(筑摩書房 880円+税)