6作家競作「決戦!新選組」第1弾 葉室麟氏が語る沖田総司
■「心に傷を抱いた人斬り沖田を描きました」
競作のトップを飾るのは、初期のころの新選組をつくったといわれる水戸出身の郷士・芹沢鴨の暗殺事件を題材にした「鬼火」である。主人公の沖田総司と芹沢は新選組と名乗る前の「浪士組」で出会い、内部の主導権争いに巻き込まれていくという物語だ。
「沖田といえば、これまで多くの作品に描かれてきたようにしなやかな強さと儚げな雰囲気の人物像。私の個人的なイメージでは、梶井基次郎のような、ちょっと翳りがあって、レモンのような青春の苦みと、ある種の清新さを持ち合わせているような人物の気がしていました。冷酷無比な人斬りをする一方で、子供たちと無邪気に遊んでいたという史実も残っており、超越的なものを持ちながら普通の青年でもあるという、そのアンビバレントさが沖田の魅力なんですね」
著者は今回、沖田を描くに当たり、相反する性質を内包する沖田をつくっているものについて、考え尽くしたという。人斬りが子供と戯れるという違和感からハタと気が付いたのは、無垢なものに憧れる人は、心に傷を持っているのではないか……という新しい沖田だった。