6作家競作「決戦!新選組」第1弾 葉室麟氏が語る沖田総司
「心に傷を持つ沖田の目の前に現れたのが芹沢鴨で、彼の存在が沖田を変えていきます。天才でかつ青年っぽさを抱く人が何か変わるきっかけがあるとすれば、きっと年上の男との出会いだろうという気がするんですね。というのも私たち昔の世代だと分かるんですが、情熱的な活動家は、男にとっても魅力的ですから。史実にはありませんが、沖田にとって芹沢がそういう憧れの兄貴的存在だったのではと思います」
■アンチヒーロー「新撰組」が愛される理由
新選組が幕を閉じて150年あまり。今なお、人々を魅了するのはなぜなのか。
「新選組というのは、明治維新という革命の時代において、体制側が革命派をつぶすための役割を担った集団です。しかも武力を使うわけですから、本来ならアンチヒーローで憎まれて当然の存在なのに、憎まれていません。その理由として個性的なメンバーたちによる群像劇であること、そして彼らが時代が失われていくことに抗った人たちであり、そこに私たちは、“失われた日本人の生き方”を見いだすからではないでしょうか」
史実は一つでも、スポットを当てる場所が変われば別の物語が生まれる。個性の違う作家たちが引き出す新たな「見方」を楽しめるのが、この「決戦シリーズ」最大の魅力だ。
「実は参加する私たち作家自身も、どんな描かれ方があるのかと楽しみにしているんです。今後、近藤勇や土方歳三など新選組を語る上で欠かせない人物たちが登場します。どうぞお楽しみに」