最近よく聞くIoTってなんだ?
「IoTとは何か」坂村健著
80年代からいち早くオープンなコンピューター環境の「トロン」を提唱。その後、暮らしのどこにでもコンピューターが介在する「ユビキタス」社会の到来を説いたことで知られる著者が教えるIoTのすべて。
まず「IoT」とは「インターネット・オブ・シングス」の略。つまり形のない情報だけでなく、具体物(シング)がすべてネットにつながった状態で、たとえば誰もがスマホを持ち歩く時代は誰もがネットワークに常時接続し、個人データまでネットで伝達しているのと同じなのだ。インターネット草創期の話から始まるのが著者らしいが、面白いのはやはり現代について。ドイツで提唱される「インダストリー4・0」は「4度目の産業革命」を意味し、部品製造から組み立て販売まですべてがネットワークでつながれ、生産調整が最適化されるというもの。アメリカの「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム」構想も産業機器にセンサーを仕込み、ネットワーク化するもの。
しかし著者はこれだけなら既にトヨタのカンバン方式などで実践されているという。本当に重要なのは従来のような「閉じた」形ではなく「開いた」IoT。2020年のオリンピックへの提言など著者の構想はとどまるところがなさそうだ。(KADOKAWA 800円+税)