「その後の慶喜大正まで生きた将軍」家近良樹著
最後の将軍・徳川慶喜の長い余生にスポットを当てた歴史読み物。
慶応3(1867)年、大政奉還を高く評価された慶喜だが、鳥羽伏見の戦いで一転して立場は朝敵に。32歳で謹慎生活に入り、大正2年に77歳で没するまでその余生は45年に及んだ。暇を持て余した慶喜は、毎日のように銃猟や投網に出かけ、謡や能、小鼓、油絵、囲碁将棋、ビリヤード、刺繍、そして写真にといそしんだ。最晩年には自動車まで乗り回していたらしい。2人の側室との間に21人もの子をなした。その家庭人としての慶喜の素顔を紹介。
一方で明治30年代に入り、復権を果たすまで、常に朝敵の立場を意識し、元幕臣らによる卑怯者との烙印に耐え続けたその胸の内に迫る。(筑摩書房 780円+税)