「医療者が語る答えなき世界」磯野真穂著
「私の誤診率は14・2%」と語ったのは神経内科の権威だった東大名誉教授。1960年代のことだが、半世紀以上経ったいまも、わからないことが多いのが医学の世界だ。実際、フランスの医師らが集中治療室で亡くなった人の生前診断と病理解剖とを比べた結果、30%が誤診だったという。
病名をつきとめ、病気を治すことを期待される医療者が、患者の希望と答えの出ない医療現場での現実とのはざまで何を考えているのか? 文化人類学者である著者が医療関係者に丁寧にインタビューしてまとめ上げた一冊。患者は医療に期待があるからこそ、苛立ち、言葉が厳しくなる。医療従事者の苦しみを知ることで、病院や医療従事者への態度が変わるかもしれない。
(ちくま新書 800円+税)