「悪左府の女」伊東潤著
物語の主人公は、下級官人である春澄家の娘・栄子。両親も亡くなり、姉も嫁いでしまったため、婿をとって家を存続させる使命を持っていた。
しかし、背が高く目鼻立ちのくっきりとした顔立ちをしていたため当時の美人の基準と合わず、醜女と呼ばれて縁談がなかなかまとまらなかった。
ある日そんな栄子のもとに、左大臣・藤原頼長の使者から、女房として仕えて事を首尾よく行えば、婿を世話して春澄家を存続させてやるとの話が持ち込まれる。不思議に思いながらも、お役目を果たすべく摂政家の東三条殿へと向かった栄子は、近衛帝の皇后・多子に仕える役目を与えられた。しかしその裏には、頼長の恐ろしい策略が隠されていた……。
平安時代末期、女を使ったさまざまな策略が行き交う時代を栄子の視点から描いた歴史小説。
公家と武士の権力争いが起こった保元の乱へと動き出した時代に、権力者の手駒として使われた女たちの運命がダイナミックに描かれている。(文藝春秋 1750円+税)