懐かし楽し昭和生まれの珍スポット
「日本昭和珍スポット大全」金原みわ著
この夏も里帰りや旅行など、多くの人が遠出を楽しんだことだろう。しかし、旅先で名所を巡り、夜は温泉、そして合間にはご当地グルメを楽しむという旅の定番スタイルに少々、食傷を感じている人も多いのではなかろうか。そんな人にお薦めなのが、平成の今の時代からはちょっとずれた全国の昭和生まれのスポットを紹介する本書だ。
家族でお出かけ先の人気はテーマパークだが、本書に登場する昭和のテーマパークは、最先端の今どきのそれとは大違い。
恵那峡を見下ろす高台に造られた「恵那峡ワンダーランド」(開園当時の名前は「恵那峡ランド」=岐阜県)は昭和45年の開園。一時は閉園に追い込まれたが、経営が代わりリニューアルオープンしたという。しかし、園内の遊園地のノスタルジックな遊具は昭和そのもの。さらに新たに経営者のコレクションを展示する「珍宝館」などの施設が、次々と造られ珍スポット度が上がっている。
その他、山奥の広場がひとりの芸術家が作った陶器作品に埋め尽くされた陶芸空間「虹の泉」(三重県)、関ケ原の戦いを200体以上のコンクリート像で再現した「関ケ原ウォーランド」(岐阜県)など、もはや異界ともいえる世界を次々と紹介。子どものころに親に連れられていった懐かしの遊園地も再訪してみると、「懐かしさの中に、あの頃気づけなかった“ゆるい綻び”を新発見することもあって面白い」と、著者はその楽しみ方も手ほどき。
その他、注文した品が水流に浮かぶおけで届く喫茶店「甘味処どんぐり」(静岡県)などの飲食店から、温泉街の遊技場、ストリップ劇場、秘宝館まで、日本中の珍スポットを収録。
旅のアクセントに、行程に織り込んでもよし、それ自体を目的に出かけるのもまたよし。紙上散策するだけでも十分楽しい。
(辰巳出版 1500円+税)