合理的な常識人が書いた幸せになれる行動様式
「明日クビになっても大丈夫!」ヨッピー著/幻冬舎/1400円+税
とにかく今の人生がイヤだったり、苦痛を強いられる人生を送っている人の中には本書の内容がピンとくるかもしれない。著者は7年間商社マンをやっていたが、「転勤の辞令が来たら会社を辞める」と決め、実際に会社を辞め、フリーライターになって5年、今では当時の半分の時間働きで2倍以上の収入があるという。著者は「インターネットで一番数字を持っているライター」として知られるが、本書は幸せになるための心構えや行動様式、絶対に守るべき信条が描かれる。登場するたとえ話は風俗の話やら「六本木で飲むヤツはバカ」といったおちゃらけ話が多いが、実に合理的に判断していることが分かる。
会社員時代、著者は月末の会議で営業数字を報告し合うことがバカげていると思っていた。そんなものは事前に資料を読み込んでいれば、余計な時間をかけないで済むからである。
フリーになってからも、「業界の慣習」がいかにアホかを述べる。その一例が「広告記事でライバル企業の名前を出す」ことだ。著者は楽天の広告記事を作ったのだが、実際はAmazon派である。だから「普段はAmazon派だけど楽天のコレもいい」と書いた方が説得力があると考える。
楽天はこの書き方を認めたようだが、ほとんどの場合はこうした「慣習破り」は認められない。ネットの反応を読むのに長けた人物なので、本気で書いていないことは読者に見透かされると分かっている。だが、「慣習」にとらわれた人間は、マス広告の「100%絶賛イェイ!」といった内容にしなくてはいけないと考えるが、これはアホだ。こうした指摘に対し、多くの人が「そりゃそうだよな……」と思いつつも、結局は異論を述べられず、つまらない人生が続いていく。だからこそ「動け」「正直であれ」と説くのである。
著者はおちゃらけた感覚を持ち、そういったイメージを他者からも持たれがちだが、実に合理的かつ常識人である。
「空いている椅子を狙え」「椅子を取られたら、そこから撤退する」「普通の人がやることに『ちょい足し』をすれば差別化できる。ただしカネはかかる」といった論が展開されるのだが、これは企業の戦略としても当てはまることである。
「行動しよう!」を説く本はとかく夢見がちだ。だが、本書は「会社員をやりながら副業をし、うまくいけば本業にしろ」と、これまた現実的なのだった。 ★★★(選者・中川淳一郎)