「わかっちゃいるけど、ギャンブル!」ちくま文庫編集部編
ギャンブルにまつわる名エッセーを集めたアンソロジー。
作家の阿刀田高氏は、よく講演会で「阿佐田哲也」の名で麻雀小説を執筆していた色川武大氏と間違われたと、亡くなったばかりの氏を述懐。一緒に文学賞の選考委員を務めていたとき、最後の2作まで絞り込まれた候補作を評価する際に色川氏は「こっちの方がこの先、化けるような気がする」と穴狙いの傾向があったと思い出をつづる。その他、麻雀、競馬、競輪、何をやってもギャンブル運に恵まれた学生時代の友人Tについて記す宗教人類学者の植島啓司氏や、幼いころ、父に連れられていった競馬場で人生の悲哀を初めて知ったという澁澤龍彦氏など。ギャンブルが織りなす悲喜こもごもの人間模様を描く。
(筑摩書房 820円+税)