「DNAの98%は謎」小林武彦著
20世紀後半から急激に進歩した生命科学は、医学に革命的な進歩をもたらしつつある。その基礎になるのが分子生物学で、今後はそれ抜きで医学は語れない。
中でも重要なのはDNAで、人類は遺伝子の情報を記録するゲノム(全遺伝情報)の解読に成功したことが知られている。しかし、実はわかっているのはタンパク質合成に必要な2%のコードDNAに過ぎず、残りの非コードDNAである98%は依然、暗黒領域であるという。
では、非コードDNAは何をしているのか? 東京大学分子細胞生物学研究所の教授である著者が、最新の情報をもとにその役割について解説してくれる。これからの新しい治療のヒントも書かれていて興味深い。今後の医学の方向性を知るうえでも読んでおきたい一冊だ。
(講談社 920円+税)