「虎の牙」武川佑著
山の民イシは山神と思われる巨大なアオシシを殺した。アオシシは生き返って「たてなしの首を獲りて来よ」と命じて姿を消した。山の禁忌を犯したことで山を追われたイシは原清胤という武士をヘテコ石まで案内する途中、川を渡ろうとする若い武士が火筒で狙われている場面に遭遇する。清胤が助けた若い武士は甲斐の守護、武田信虎(信玄の父)だった。イシの素性を尋ねた信虎は、イシが幼いころさらわれた自分の父親の違う兄だと言い、3人は義兄弟の契りを結ぶ。清胤はかつて命を救った敵将から「我らに降りかかる坂東武者の業を断て」と命じられていた。
それぞれに〈呪〉を負う2人が武田信虎に仕えて戦国時代を生きる姿を描く。
(講談社 1800円+税)