「JKハルは異世界で娼婦になった」平鳥コウ著
ウェブ上で公開されて話題になった作品が書籍化されるというのは昨今珍しくないが、これもそういう一冊だ。
ただし、こちらは中身も異色。女子高生が交通事故に遭ったら異世界に飛ばされてしまい、そこで娼婦となって生きる、というストーリーなのである。
その世界は都市の外で怪獣が跋扈し、戦士たちが魔物たちと戦っている、との設定だ。ヒロインのハルは、その戦いの最前線の町の娼館「夜想の青猫亭」で働いている。生きるためには仕方ないよね、と割り切っている。この異世界にはスマホがなく、ハルにしてみれば遅れているとしか思えない。さらに男尊女卑の社会なので、女子だけで食事したり飲んだりする習慣がないのも致命的。これはそういうハルの日常を描く長編だ。
娼館が舞台の小説なので、その手のシーンが多く、さらに「マ○コ」とか「チ○コ」とか、直接的な表現が頻出する。しかし、ちょっとなあと思いながら読んでいくと、意外な局面に立ち会うことになる。
ハルは娼婦の生活の中でも逞しく生きるヒロインなのだが、本当に戦うヒロインなのだ。その痛快な雄姿が素晴らしい。変貌する兵士の描写に、作家としての確かさを感じることも出来る。まだ引き出しがあると見た。
ならば、これは続編が書かれるべきだろう。魔物との決着はまだついてないし、謎も残されている。これで終わるべきではない。(早川書房 1300円+税)