「江戸ねこ日和 小料理のどか屋 人情帖22」倉阪鬼一郎著
天保5(1834)年の師走、旅籠付きの小料理のどか屋を営む時吉とおちよ夫婦は、1カ月前に大往生を遂げた看板猫のどかのことが思い出されてならない。三河町、岩本町、そして現在の横山町へと、大火に見舞われ、ともに渡り歩いてきた、いわば店の守り神のような猫だった。
おちよは、皆から愛されたのどかのためにお参りができるような祠をつくって、猫をかたどったお地蔵様を据えたい。常連客の大工衆に相談すると、早世した息子に代わって修業を始めた初次郎が祠づくりに名乗りを上げてくれた。さらに地蔵は旅籠の客の僧侶の口利きで秩父の名工がつくってくれることになった。
うまそうな料理の数々とともに展開する人気時代小説シリーズ最新刊。
(二見書房 648円+税)