「母恋わんたん 南蛮おたね夢料理(三)」倉阪鬼一郎著
安政4(1857)年のある朝、芝・伊皿子坂の料理屋「夢屋」の女将・おたねは、料理人のおりきらと魚の仕入れに浜まで出かける。浜では漁師らが捨て子を囲んで困り果てていた。おたねは、「ぶんぞう」というその捨て子を夢屋で預かり、母親捜しを始める。3年前の震災で一人娘を失っているおたねは、母親が見つからなければ、ぶんぞうを自分の子として育てるつもりだ。まずは一石橋の南詰めにある迷子の標石にぶんぞうの似顔絵に母親への呼びかけの文を添えて張り出す。迷子の標石は、子供を捜す方と知らせる方の情報交換の場だった。
夢屋の料理が人々のお腹と心を温める時代人情シリーズ最新刊。
(光文社 600円+税)