「青空と逃げる」辻村深月著

公開日: 更新日:

 本条力は、小5の夏休みを、母の早苗と2人、四万十川の岸辺で過ごしていた。東京育ちの力には、青空の下での川遊びやテナガエビ漁が珍しく、楽しい。母は食堂で働いている。

 ある日突然、母は四万十を離れてどこかに逃げると言い出した。東京からの追っ手に居場所を見つかってしまったらしい。急いで列車に乗ったものの、行くあてはない。

 母子で逃げる生活は、あの事故から始まった。有名女優が運転する車が深夜、事故を起こした。助手席には、舞台で共演することになっていた力の父が乗っていた。巻き起こる不倫疑惑報道、その後の有名女優の自殺、そして父の失踪。家族は壊れ、傷ついた母と息子は、それまでの生活を捨てて逃げた。

 読売新聞に連載された長編小説の単行本化。四万十川から瀬戸内海の家島へ、別府から仙台へ。ロードムービーさながらに風景が変わり、方言が変わる。逃げる先々に、わけありの母子に手を差し伸べる人たちがいる。

 母は、ありったけの力で息子を守ろうとした。かつて父と同じ劇団の女優だった母は、息子が知らない顔をいくつも持っていた。息子は、母と逃げながらさまざまな出会いを経験し、大きく成長する。でも、やっぱり、大好きな父に会いたい……。

 壊れた家族は再生できるのか。逃げる生活が終わりに近づくにつれ、意外な真相が明らかになっていく。(中央公論新社 1600円+税)

【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  3. 3

    大谷の今季投手復帰に暗雲か…ドジャース指揮官が本音ポロリ「我々は彼がDHしかできなくてもいい球団」

  4. 4

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  5. 5

    フジ反町理氏ハラスメントが永田町に飛び火!取締役退任も政治家の事務所回るツラの皮と魂胆

  1. 6

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  2. 7

    やなせたかしさん遺産を巡るナゾと驚きの金銭感覚…今田美桜主演のNHK朝ドラ「あんぱん」で注目

  3. 8

    女優・佐久間良子さんは86歳でも「病気ひとつないわ」 気晴らしはママ友5人と月1回の麻雀

  4. 9

    カンニング竹山がフジテレビ関与の疑惑を否定も…落語家・立川雲水が「後輩が女を20人集めて…」と暴露

  5. 10

    “下半身醜聞”川﨑春花の「復帰戦」にスポンサーはノーサンキュー? 開幕からナゾの4大会連続欠場