「ヘイ・ジュード」小路幸也著

公開日: 更新日:

 物語の舞台は、東京下町の大家族・堀田家が営む古書店「東京バンドワゴン」。86歳になった3代目店主・堀田勘一のひ孫の花陽は、かねて目指していた大学医学部の受験が間近。花陽のいとこのかんなと鈴花はそろって小学校に入学と、一家には変化の春が訪れようとしていた。

 さらに花陽の進学を機に、花陽の母の藍子は夫のマードックと共にしばらく英国へと旅立つことに。新生活に合わせて、一家総出で家庭内引っ越しが行われた。そんな折、常連客の藤島さんの父親が亡くなった。書家だった彼のための記念館設立の話が持ち上がったことから、思わぬ縁がつながるのだが……。

 本書は、人気の「東京バンドワゴン」シリーズ第13弾。

 勘一の妻で、すでに故人であるサチが語り手となって、堀田家の日々の出来事を紹介していく構成で話は進む。今回はそれぞれ春の転機を迎えた人々が、店に舞い込む数々の厄介事を下町ならではの人情と愛で解決していくストーリーだ。すくすくと大きくなっていく子どもたちや、さまざまな事情を抱えた人たちを、見守り支えていく大家族のまなざしが優しい。 (集英社 1500円+税)

【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…