「青嵐の坂」葉室麟著
城下で起こった「お狐火事」それに続く秋の大雨による凶作で扇野藩の財政は破綻の危機に瀕した。そこで藩主が目をつけたのは郡代檜弥八郎。軽格の身から700石の郡代まで上り詰めた男だ。中老に取り立てられた弥八郎は、藩の倹約をはじめ、城下の再建、特産物の育成などに辣腕を振るったが、筆頭家老や商人の企てであらぬ収賄の罪を着せられ、切腹する。そして一人娘の那美は遠縁の矢吹主馬に預けられた。
その数年後、江戸から弥八郎の息子慶之助が新藩主の側近としてお国入りする。彼は独自の藩政改革案を持っており、それを嫌う筆頭家老らは那美と主馬を結婚させ、主馬に檜家を継がせようとする。しかし主馬は弥八郎から密命を帯びていた。
妻のため、藩のため、不正を許さぬ武士の魂が光り輝く時代小説。
(KADOKAWA 1600円+税)