「嵯峨野花譜」葉室麟著

公開日: 更新日:

 文政13年1月、京都の大覚寺で修行に励む少年僧・胤舜は年若くして活花の名手として評判が高く、大覚寺の花務職に任じられていた師の広甫から、「3日後に、法金剛院に参れ」と告げられた。大覚寺から1里余りのところにあるその古寺に、さる女人が参拝に訪れるから、その方のために花を生けよと言う。3日後に訪ねると、萩尾と名乗る女人は「昔を忘れる花を生けてほしい」との難題を投げかけるのだった。

 そして胤舜がすべてをのみ込み、その難問に応えた活花は、白磁の壺にくっきりと伸びた松の枝と重なり抱き合うような2輪の白椿だった。(「忘れ花」)

 ほかに、亡くなった弟のような花をと求められる「利休の椿」、闇の中で花を生けよという「闇の花」など、次々と出される難題に挑み続ける少年僧の成長物語10短編を収録する。(文藝春秋 1700円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…