「焦土の刑事」堂場瞬一著
1945年、空襲を受けた町を見回っていた京橋署の高峰刑事は、防空壕に死体があるという通報を受けた。被害者は20代の女性で、首に刃物傷がある。ところが、捜査の途中で署長が「あれは空襲被害者で、身元不明ということにする」と言う。どうやら本部の指示らしい。やがて、防空壕でまた女性の死体が発見された。後頭部から刃物で切られている。高峰は連続殺人だと考えたが、突然、本部の者だという男が現れ、遺体を運び去った。
納得がいかない高峰は極秘で捜査を続けるが、ある日、焼け残ったビルの陰で男に襲われた。「これ以上、余計なことはするな」と言ったのは、あの日、被害者の遺体を持ち去った男だった。戦時下の狂気の犯罪を追う刑事を描く。
(講談社 1700円+税)