「こちら横浜市港湾局みなと振興課です」真保裕一著
主人公は、横浜市港湾局みなと振興課で働く船津暁帆。採用試験を突破し、あとは将来有望な男をゲットすれば老後まで安泰……というもくろみだったのだが、配属されたのは本庁ではなく離れ小島のような産業貿易センタービル5階。広報や国際交流、施設管理や防災計画などが主な仕事のはずが、港がからむあらゆる雑事が回されてくるのが悩みの種だった。
ところが、多すぎる仕事を抱えて青息吐息だった暁帆の下に、城戸坂泰成という国立大出のエリートが突然配属された。そのパーフェクトな仕事ぶりを見て、なぜこんなエリートがうちの部署に? という疑念を深める暁帆。そんなある日、カンボジアからの研修生が失踪する大事件が発生するのだが……。
「連鎖」で第37回江戸川乱歩賞を受賞してデビューして以来、「ホワイトアウト」や「奪取」などの作品で数々の賞を受賞している著者の最新作。横浜を舞台に、暁帆と城戸坂の名コンビが次々と舞い込むトラブルを解決していく。氷川丸、コスモワールドの観覧車などでおなじみの横浜を舞台に、港ならではの人と国をつなぐ物語を温かく描いている。
(文藝春秋 1500円+税)