「静おばあちゃんと要介護探偵」中山七里著
東京高裁の元判事の高遠寺静は80歳。名古屋法科大学創立30周年で記念講演したとき、聴講席の最前列にいた車椅子の老人に「あんたの講話は面白くないな」と言われた。地元の不動産会社社長の香月玄太郎だった。
立食パーティーで香月ととげのある言葉の応酬をしていたら、突然、ごう音が響いて窓ガラスが割れた。大理石の台座に金色のオブジェを乗せたモニュメントが破壊され、その中に死体が……。それはそのモニュメントを制作した彫刻家の櫛尾奈津彦だった。
モニュメントが建立されたのは5年前だが、櫛尾の死亡推定時刻は一昨日から昨日だという。
「二人で探偵を」など、老老コンビが難事件に挑む短編5編。
(文藝春秋 1400円+税)