「南三陸日記」三浦英之著
東日本大震災直後、宮城県南三陸町に赴任した新聞記者によるコラム集。
取材中、記者として必ず聞かなければならないのは自宅と家族のこと。その質問に「申し訳ありません。家も家族も無事なんです」と答えた渡辺宏美さん(35歳)は、取材の翌日、隣市に引っ越していった。断水が続く町では暮らしが成り立たず、何よりも周囲に「あんたはいいちゃね、家も車も無事で」と言われている気がして、胸が張り裂けそうになるからと。
その他、婚姻届を出しに行ったまま帰らぬ夫との子を産んだ女性とその家族の物語、駐車場の縁石を机代わりに勉強する子供とボランティアの元教師の交流など、被災地で暮らし、被災者に寄り添いながら記された文章に心が揺さぶられる。
(集英社 550円+税)