7年目の「3.11」を考える本

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「『牛が消えた村』で種をまく」豊田直巳写真・文

 東日本大震災と福島第1原子力発電所の事故から明日で7年。家族を失った人の悲しみは癒えることなく、原発事故ではいまだに5万人もの人々が故郷に戻ることができず、避難生活を余儀なくされている。当事者ではなくとも、地震・津波・原発事故について、それぞれが当時考えたこと、感じたことを決して忘れてはならない。今週は、改めて震災と向き合うべく、7年経った今だからこそ書けた最新関連書5冊を紹介する。

 福島県北東部の飯舘村で酪農を営んでいた長谷川さん一家の7年を追った写真ドキュメンタリー

 原発事故前、飯舘村は「日本一、美しい村」と呼ばれていた。その美しさは、「までい」に村づくりに励んできた村の人たちの誇りだった。「までい」とは、「手間ひまかけて」「ていねいに」「心をこめて」という意味のこの地方の言葉。しかし、原発事故を境に、暮らしは一変してしまう。牛の健康を守るため、出荷のできない乳を搾っては捨てる日々が始まり、ついには愛情込めて育ててきた牛を手放し避難。美しかった村は除染で出た汚染土が詰め込まれた黒い袋に覆いつくされる。

 長谷川さんは、もう息子や孫を村に帰らせるつもりはない。それでも荒れ果てていく村を見捨てることができず、避難先から村に通い、牧草地にソバの種をまき、世話を始める。故郷を追われた人々の悔しさが写真からにじみ出る。(農文協 2000円+税)

「復興の日本人論」川口マーン惠美著

 ドイツ在住の作家が、震災後に取材を続けてきた福島の現実を通して考察する現代日本人論。

 福島で多くの人の命を奪ったのは地震と津波であったはずなのに、報道の焦点は原発事故に定められ、現在でも復興は遅々として進んでいないという認識が我々に刻み込まれているのはなぜか。そして、ほとんどは税金と電気代、つまり国民から支払われている莫大な賠償金のからくりと、その賠償金がもたらした地域の格差と分断など、これまでマスコミが直視してこなかった福島の現実をありのままに伝える。

 その上で、これまで国を支え、繁栄させてきた日本的な思考法が福島の復興を邪魔しているのではないかとも指摘。原発事故で改めて問われるエネルギー問題などにも触れながら、福島の復興を日本再生の一歩とすべき方法を考える。(グッドブックス 1400円+税)

「津波の霊たち」リチャード・ロイド・パリー著、濱野大道訳

 震災直後から被災地に足を運んできた日本在住の英国人記者によるルポルタージュ。

 74人の児童と10人の教職員が津波によって命を奪われた宮城県石巻市立大川小学校。5年生の末娘・千聖ちゃんを失った母親のさとみさんや、同じ5年生の大輔君を失った母親のひとみさんらが、あの日いつものように送り出した我が子の変わり果てた姿と再会するまでの悲痛な体験を明かす。生き延びた児童は、大輔君が教師になぜ裏山に避難しないのかと問う声を聞いたという。

 長期間にわたる綿密な取材で、教育委員会と保護者の対立や、遺族の葛藤、裁判の判決に至るまでを描きながら、同校で多数の犠牲者が出てしまった背景に迫る。

 一方で、被災者の多くが体験したという心霊現象も取り上げながら、外国人の視点から未曽有の天災に遭遇した日本人を描き出す。(早川書房 1800円+税)

「東電原発裁判」添田孝史著

 福島第1原子力発電所の事故後、国は「事故に国の法的責任はなく、原発を国策として進めてきた社会的責任しかない」、一方の東電は「津波は予見できなかったが、原子力損害賠償法により無過失でも賠償することが定められているので賠償している」という姿勢を堅持している。

 そんな国と東電の責任を明らかにしようと、原発事故をめぐり、損害賠償などを求めて住人らが起こした集団訴訟は全国で約30、原告は1万2000人以上に及ぶ。昨年、地方裁判所で下された3つの判決では、いずれも「津波は想定外」とする東電や国の主張は認められなかった。

 本書は、裁判に提出された証拠書類や東電の内部文書、政府事故調による関係者への聴取記録など、新たな資料を基に、津波を予測して事故を避けることはできたのか、事故の責任は誰にあるのかを改めて検証する。(岩波書店 780円+税)

「漂流するトモダチ」田井中雅人+エィミ・ツジモト著

 アメリカ海軍による被災者救援「トモダチ作戦(オペレーション・トモダチ)」によって被曝した元米兵らのその後を追ったノンフィクション。

 合同演習のため韓国沖に向かっていた原子力空母ロナルド・レーガンは、トモダチ作戦のため急きょ日本にかじを切り、13日早朝、三陸沖に到着。ヘリコプターで被災地に救援物資を届けるなど、1カ月にわたって海上だけで約1万7000人の兵士が作戦に参加した。

 その間、レーガンは高レベルの放射線物質を大量に含む放射線プルーム(帯状の雲)に何度も包まれる。その後、甲状腺疾患や白血病などさまざまな病気を発症する兵士が続出。2012年末に兵士8人が医療費などに充てる基金の設立を求め、東京電力などを提訴した。

 現在、訴訟の原告は400人以上にふくれ、死者9人が出ているという。(朝日新聞出版 1400円+税)

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