「上野―会津 百五十年後の密約」西村京太郎著
明治維新150年となる2018年の春、築地の勝海舟の銅像が何者かに持ち去られた。
翌日には都庁に、上野の西郷隆盛の銅像を破壊して不忍池に沈めろという脅迫状が届く。
都知事の要請を受けて、十津川らが捜査に乗り出す。「戊辰百五十年の歴史を正す者」と名乗る犯人は、江戸無血開城の歴史認識に疑問を抱く人物と思われた。
捜査には徳川旗本の子孫・日下刑事をはじめ、薩摩藩や会津藩の家老の末裔である福島県警や鹿児島県警の刑事も加わる。十津川らは、上野の西郷像を修繕を装い青いシートで覆い監視。1週間後、要求を拒否された犯人は新たに東武鉄道の「特急リバティ会津」の爆破を予告してくる。
著者独自の歴史観をもとに描く長編ミステリー。
(文藝春秋 980円+税)