「鳥肌が」穂村弘著
歌人の著者が、日常生活の中で抱いた違和感や恐怖をつづるエッセー集。
雑誌の短歌欄で、恐怖をテーマに募集した折に寄せられた「父の小皿にたけのこの根元私のに穂先を多く母が盛りたる」(中山雪)という作品を一読してぞっとしたという著者。33歳の作者自身の「昔から変わらずに母が母であり続けることがひどく恐ろしい」というコメントも紹介しつつ、死がこわいのはわかるとしても「愛がこわいのは何故だろう」と思いを巡らす。(「『母』なるもの」)
他にも、小さな子供と大きな犬が遊んでいるのを見るのがこわいと感じると打ち明け、次の瞬間に起きることへの想像力について記す一文や、家族や友人の長年の秘密を知ってしまった知人の話など。「鳥肌が」立つようなエピソードの連続。
(PHP研究所 700円+税)