「笑う神さま図鑑」川副秀樹著
古来、八百万の神と言われるように、日本人は身の回りのありとあらゆるものの中に神の存在を感じてきた。神々は、決して厳かなだけでも、威張っているわけでもない。神楽などの奉納民俗芸能は、人間と神さまの娯楽のためであり、神さまはエッチなことも、お酒も大好きで、人が楽しいと感じるものは神さまも好きに決まっているという。
そんな神さま71体(本書では仏教の仏さまも神さまと呼ぶ)の知られざる一面を紹介する図鑑。
例えば、牛若丸に武術を授けたといわれる鞍馬の天狗大僧正。鞍馬山の「奥の院魔王殿」はその大天狗を祭っているが、山内史跡パンフレットの解説文によると、魔王大僧正は、650万年前に金星から地球の霊王として天下った金星人だというから何とも驚きだ。
お馴染みの大黒さまは、優しいけれど好色で極悪という人間的な神さま。6人の妻を持ち、子どもが180人という絶倫ぶりが、縁結びの神と言われるゆえんだ。ふつうは2つの俵の上に立つか座っているが、港区・大法寺の「子宝大黒」は積んだ3つの俵にまたがっており、著者はその真ん中の俵は「おちんちん」だという。
そんなちょっとエッチな神さまから、動植物(妖怪も含む)と石の神さまや変わりお地蔵さんなど、タイプ別に紹介。
中には、むかしヒトだった神さまもいる。面白いのは、今は瘧(悪性の流行病)や熱病を治す神さまになっている幸崎甚内が生前は悪事をつくした山賊の頭領だったり、恋愛成就の神さまになっている久米平内が、生涯に87人もの人を斬り殺した殺人者だったりと、悪人たちも今では立派な神さまとして信仰を集めていることだ。彼らが神さまになった経緯も詳述。
神さまのそんな面白エピソードを知ると、ちょっと親近感が湧いてくる。
(言視舎 1200円+税)