「黒いマヨネーズ」吉田敬(ブラックマヨネーズ)著 幻冬舎/1300円+税
最近私は女性向け恋愛情報サイトで連載をしているが、書いていることは基本的には「男の考えていること」に加え「男はいかにバカか」である。著者と私は同年生まれで同様に大酒飲み。何度も「なに、この人、一緒に飲んでバカ話したい!」と思ってしまった。
とはいっても、私自身バラエティー番組を一切見ないため、ブラックマヨネーズの芸風は一切知らない。それなのに、エッセーとして何げない日常やら世間のちょっとした違和感については実に共感できるのである。そして時々家族愛やらカネがなかった時の話、売れない後輩などの話も入り、ホロリとさせる。
自分を育ててくれた祖母が中学時代に自分の名前を覚えておらず、激怒した著者はもう彼女の家に寄り付かなくなった。しかし、死後、とあるエピソードを聞き号泣した、というのは本書屈指の名エピソードである。
ほかにも、こんな記述があった。相方に関するグチを言う、売れていない後輩に関するものだ。
〈勝負している相手がお客さんや他の芸人じゃなく、相方になってしまっている(中略)そうなると非常に危険で、「スベれ相方!」となり、さらにスベった相方に「ハイ、スベったぁ。何ですか? 今のギャグは?」となる〉
一般の勤め人にしても、ライバル社を敵視するのではなく、本来協業しなくてはならない社内の仲間の失敗を念じるようにもなったりすることがある。しかし、それは全く生産性がないばかりかギスギスする。そこを著者は見抜いている。
時々、社会派ネタもあり、過去に私も主張したことと全く同じことも書いてあってギョーテンした。選挙に関し、こう提案したのだ。
〈「選挙権の年齢引き下げはせず、逆に76歳以上の方から取り上げる」というのはどうでしょうか〉
なお、「浮気」という言葉は誤りで、本当は「浮チンポ」である、とも主張する。つまり、妻や恋人以外の女性とエロ行為をしてしまった場合は、脳味噌VSアソコの闘いで、アソコが勝ってしまった、ということだ。著者は本書を女性向けに書いておらず、「なっなっ、男だったら理解できるよな」といったぶっちゃけ話が続く。
よって、女性からすれば理解ができない主張も多いかもしれないが、これも男の真実である。そう書くと「正当化するな!」と言われ、ネットで叩かれるんだよな、これが。 ★★★(選者・中川淳一郎)